4年前,母は市民病院の整形外科に入院させてもらった.
圧迫骨折の痛みで
動かすことができなかったのだ.
右耳は聞こえず,左耳は強度の難聴で
大きな声でいわないときこえない.
1週間くらいして
本人の意思がはっきりしてきて
(ボケはかなり進行していた)
家に帰りたい,自分で何とかできる
といいだした.
ある日,私の仕事場の留守番電話に
女性のヒステリックな叫びが入っていて
くりかえしきいてやっとわかったのは,
看護師長が,私に病院にきてくれ
という内容.
商売をやめて,
夕方,急いで病院にいく(1時間半かかるところ)と
ナースステーションで
「本人があばれるので対応できない」という看護師長の伝言が
あるだけで,母は静かにしている.
私がいくと,
ひとりでできるから,帰りたいという.
3回ほど同じような連絡があり
いくと,本人は眠っているか
ナースステーションで食事をしていて
あばれている気配がない.
看護師にきくと
「婦長がいうので,連絡した」と.
私はそんなにこまってはいない.
また,看護婦長から翌日の夜,電話がかかってきて
「お母さんに電話で話してあげてください」
-
- いえ,母は耳がきこえないので,
電話は無理ですが…
むすこさんからやで,ほらでてみ,
…電話のむこうで,でえへん,といってる母の声がきこえる.
はよ,電話にでんかいな,
-
- もしもし,母は電話できないのですが…
がちゃつ,と受話器が置かれた音がした.
===
しかし,
病院側は,きったつもりが,
ナースステーションの音がすべて,受話器がひろっていたのだ.
むすこさんからの電話,なんででえへんね.
…いやや
ほら,でんかいや.
…
「ニンチ」かいな
ニンチなんか
電話くらいでれるやろ
つごうのええ,ニンチやな.
かえったらどうや
ニンチやったらしずかにしとけ
H原看護師長の罵声が10分程度,
こちらに伝わった.
意図的だったのかもしれない.
私は,こちらの受話器をおいた.
電話をこちらからかけると,
H看護師長は,
「すぐにきてください.
暴力をふるわれる.
病院では対応できません」
終電でいったら,
夜勤の若い看護師がこられた.
「母はどうしてますか」
「寝ておられます」
部屋にいくと,
うとうととしていたが,
すぐ気がついた.
おとなしくしていた.
看護師は,「看護師長がいわれるのでしかたがない
私たちは対応できる」
しばらくして,病院をでた.夜中だった.
===
翌日,担当の医師に相談した.
「暴力といっても,母は身動きできないのですが.
どんな暴力ですか?」
「いや,みたことはありませんが,婦長がいうので
そうなことがあるのでしょう」
「少しよくなるまで,むりでしょうか?」
「本人の精神状態のために,病院ではむしろよくないと
看護師が判断したので,私としても入院を続けさせることはできない」
「運ぶことができないのです」
「わかってますが,どこか施設をさがしてください.協力します」