チョン・ソンイル監督『西部戦線』2015,.
(Gyaoでみた)
何年も前にみたが,
おもしろかったので,みた.
自分につごうのよい記憶になっていた.
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朝鮮戦争の終盤,
軍事機密文書を前線に届ける南の伝令部隊の
生き残りナンボク(おそらく「南北」と同じ発音,ソル・ギョング)と
北朝鮮の戦車部隊の生き残りのヨンガン(ヨ・ジング)
の目をとおした戦争の姿.
監督,チョン・ソンイルの戦争について
鋭い批判があらわれている.
生き残った北と南の兵士が1:1で戦う.
その場所のたいはんは,北の戦車の中だ.
中年の南の男が運んでいた機密文書を,
20歳にもなっていない
北の若い兵士がひろい,争奪戦となる.
戦車の中では銃をもっている方が
政治的主導権を握る.
戦車はある村に入る.
村人たちの国家についての考えこそ,
戦争に対する私たち庶民の考えであろう.
この映画は,
コミカルなドラマのつくりをもっていながら
戦争の悲惨さ,無意味さを
描き出そうと
演出されている.
俳優たちは,ふざけたつもりで演技をするのでなく
命をかけた戦いを演じている.
じゃがいもを食らい,たばこを吸う
ふつうの人間が兵士であり,
死んでしまう.
コメディであっても,
庶民は死ななければならない.
この映画はけっして戦争を美化しない.
戦死の無意味さ,残酷さを訴えている.
前線を重視するイ・ギョンヨン演じる中尉はいう.
あの山をこえれば,そこに女房とこどもが眠っているのだ.
1953年,板門店で休戦協定が結ばれる.
私たちは,生まれる国家を選べない.
ただ,生まれた,育った,暮らした土地が
恋しいのだ.