イ・ジャフン監督『奇跡』2021
邦題「手紙と線路と小さな奇跡」と予告編によって
つけていた見当からはるかにそれて
笑い,泣いてしまいました.
平日の午後のシネマートは
私のようなやや元気な老人が中心.
終わってからの男子トイレでみた爺たちは
みな涙したあとのようです.
父(イ・ソンミン)でさえ,
われわれよりはるかに若く,
自己投影とはいかないのに,
でてくる人々,子役の状況にまで
浸ってしまったのです.
歳をとっても
雑踏での虚無感
じぶんの行いへの後悔で
生きていくことなんかどうでもいい
と思ってしまう時間がふえている私たちに
対して
声をかけてくれる
よりそってくれる
映画でした.
姉(イ・スギョン)と自分
恋人(イム・ユナ)と自分
父親と自分
村人と自分
見ている私たちは
いつのまにか自分の中で
思い当っているのです.
線路・鉄橋だけが自分たちを
現実世界につなげてくれている.
1980年代の韓国の山間の取り残された村の日常は
大阪で暮らす人間にとって
こころの中に描くしかない特別な時間と空間です.
おとぎ話のようで,
実話のような.