アンドレイ・タルコフスキー『ノスタルジア』ソ連・イタリア,1983
個人すぎることですが,
私がひとりで映画をみにいくことの
きっかけとなった作品です.
若いころは,映画や娯楽につかう
金がなかったが,
いざ給料とりになってみても
とくに趣味はなく,
家になかった,クーラーやテレビ,
ビデオデッキ,
ステレオセットを買うくらい.
キネマ旬報を購読する(岡山出身の)同僚にすすめられたのが
『ノスタルジア』.
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わけがわからなかったのですが
俳優は美男・美女なのかも見分けがつかないのに,
映像が美しくて
誰かの夢(じぶんの夢ではなく)を
うかがい見ているような感動を覚えたのです.
主人公の作家は,すでに禿げているのに,
性欲は隠せてはいないようです.
男に旅につきあっている女がいて,
ちっぽけな日本人でしかない
私にとっては
これが聖母のイメージか,
と思わせるほど,存在が美しくなってきます.
信仰の魅力でありながら,
タルコフスキーは性的な美しさを加えています.
水の多様性は,雨から水たまり,
すきとおった川の流れへ変化し,
温泉に
生命や時間とのむすびつきを感じました.
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画面の美しさは
日本人にはだせない
左右の対比,2分割などが
絵画性を際立たせます,
廊下や通路,窓は
その2つの世界をつなぎとめ
融合する機能をもつのです.
けっして,遮断しているわけでは
ありません.
『ノスタルジア』は
何度かみましたが,
何度も眠たくて,ねむってしまいます.
はっと気が付くと
目の前に,
美しい風景.
映画でしかつくれない
芸術作品.
何度みても,わからず
夢をみているようです.
その主人公が作家であるというのも
映像で作家の内面を
描こうとするタルコフスキーの
不思議なところで何も頼ることができません.
また見たい作品ですが,
また居眠りしてしまい,
かんじんなことを見逃すのかもしれません.