むなくそわるい大作『吹けよ,ミプン』2017
(Gyao)
脱北の際,父と兄をうしなった
「ミプン」が母と兄の幼い息子の
3人で,資本主義の韓国社会で
生活苦にあえぎ,
ただ一つの希望,祖父さがしを
めぐって
さまざまな苦境を乗り越えていきます.
見ている私たちは
登場人物たちの考えや関係など
すべて「ネタばれ」状態ではあるのに,
彼らには,それがまったくわからないのです.
すぐそこに実の孫がいるのに
気が付きません.
それは,嘘であったり詐欺であるのに
彼らは,信じてしまいます.
なぜ,そんなことを言い
人を傷つけてしまうのか.
『吹けよ,ミプン』は大作であり
登場人物の考えや,日常まで
いきいきと描かれていくので,
見ていると,彼らの町に
私たちは入り込んでしまって,
右往左往してしまうのです.
***
この作品は,女性が世界を構成しています.
男たちは
短絡的であんまり役にはたちません.
現実そのもの.
男には野心と欲望がみえるのですが
意思が弱くて
女の信念と思想に翻弄されるばかり.
不遇で孤独な女性の嘘と行為が
ミプンの家族を,
苦境と貧困に追い詰めていきます.
**
嘘を重ねることでえた
資産家の嫁や妻であり続けることは
けっして心安らぐことがなく,
ミプンたちの存在をなくすための
悪事をつぎつぎと働くことになります.
**
いわゆる「むなくそわるい」長編.
「爽やかな」とか宣伝していなければ
みなかったジャンルでした.
嫁いじめ,三角関係,嫉妬,などが
これでもかこれでもか
と繰り返されます.
ミプンひとりが
さわやかで
実際的で,
前向きな生き方をしています.
ミプン役のイム・ジヨンと
偽孫パク・シネ役のイム・スヒャンが
後半,すばらしい存在感を示します.
とりわけ,ミプンの恋人ジャンゴ(ソン・ホジュン)の
母グムシルを演じるクム・ボラの
強烈な「嫁いびり」は
見ていて,こころやすまるときがない.
どうなっているのか,
どうなるのか
しっかり把握できているのに
はらはらどきどきが
最後まで演出されていました.
ところが最終回で
みごとな決着をつけ,
リアリティとコメディが融合した
「ムナクソワルイ」傑作.
【蛇足】
Gyaoでみましたが,全68話.
1話,だいたい50分くらい.
これが,不自然なところできれます.
50×68÷60=56.666で考えると
56話くらいの作品.