『荒涼館2』ーこの巻だけでも読む価値あり.
第2巻を読めるかどうか自信がありませんでしたが,
結局,読んでしまいました.
第1巻の内容をたいがい
忘れていたのですが,
巻頭に,これまでのあらすじが
あり,登場人物のリストや
だいたい流れが思い出せます.
チャールズ・ディケンズの作品が
イギリス人だけではなく
世界の人にとって(少なくとも日本人の私にも)
文学として楽しむことができるのは
じぶんのいきる世界を理解させてくれるように
思えるからでしょうか.
ロンドンの裁判所界隈の人々のくらしぶりを
若い娘エスターと作者の目を通して
描きだします.
司法制度に焦点をあてながら
ディケンズは
不労階級の存続のどうしようもない不条理さと
下層の生活の人間以下の状態を
読者の前に提示してみせます.
***
莫大な遺産は,何十年も続いているだろう訴訟で
誰のものかもはっきりしないので
関係者たちはその幻を
自分たちの身分や資産のたよりにしているかのように
非実際的であり,
何の価値もうみださない仕事にみえます.
遠いアフリカの慈善事業にあけくれ
家族たちをかえりみないジェリビー夫人は,
夫を破産においこみます.
裁判所や法律家は,
何の進展も後退もない訴訟に関わる人たちの
あいだをいったりきたり実務的に振る舞うだけで
身分と高額な収入が保証されています.
「ジャーンダイス」に寄生するスキムポール氏の
ゆとりのあるくらしと,
街を掃除して人々からめぐんでもらっているジョー
の浮浪生活は
同じであるのに,まったくちがうのです.
***
第2巻では,
説教師チャドバンドや
立ち居振る舞いの権威ターヴィドロップなど
脇役がこれまた
無意味な活躍をします.
いちばん実務的に動いているのが
じぶんでは歩くことができない
金貸しの老人スモールウィードなのです.
***
私のみている世界がここにあります.