体験が語る歴史の真実『ひろしま』
(Gyao)
1945年8月6日,広島への原爆投下を
なぜ
思い出そうとしなかったのか.
そもそも私には
その記憶がないし,
イメージももたなかった.
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映画『ひろしま』
原爆のすさまじさ,
それをひきおこしてしまった戦争を
続けてきた人間のおろかさを
私たちに気づかせ,
何をめざすべきなのかを
考えさせる力をもつ映画である.
このような大作を見逃していた私の
うかつさにもあきれる.
***
70年以上前の白黒映画であるのに,
私たちの日常は
一瞬にして,
核爆弾により,破壊される.
地獄? 生き地獄なら生きていられるだけの
「非日常」が残されていてもよさそうだ.
「戦場」「戦禍」さえも,壊滅される.
***
日本がポツダム宣言を受諾して
敗戦をむかえた,というような
支配者の歴史を
学んできたことと
歴史を理解しようとすることは,
別次元である.
***
現実は,たぶん
この悲惨で絶望的な映画の何千倍も
絶望的で,徹底的に非人間的な
状況であったろう.
ひとびとの
悲痛な叫び,あえぎ,死の恐怖,
死の臭い,死の悲しみ,
それらさえも
燃やしてしまう核の反人間的なエネルギー.
***
戦争をはじめたのは
私たちではない.
支配者であり,権力者であり,軍人である.
死んでいくのは
ふつうの人々.
この映画は
抽象的な戦争・原爆という問題を
ことばと,映像で
明示しようとする.
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広島・長崎に原爆が落とされたということは
日本人に核兵器が用いられたということ.
映画の中で,戦後の高校生たちが
いくつかの重要な見解をのべている.
制作された1953年は,
GHQの支配ではなくなっていたが
1950年の朝鮮戦争をはさみ,
対米軍事協力に傾いていた時期でもあるから,
映画は,
米国の戦争責任については
言及をさけている.
広島の状況を淡々と
映しあげていくことで
政治色がうすまり,
映画作品としての質を高めている.
【追記】
古い映画がどうやって「リマスター」されているのかは
知りませんが,
このような傑作かつ大作を
NHKで放送するようなリマスター版として
再生させてほしいものです.
ヨーロッパ映画や韓国映画なら
ふつうにあるような演出やセリフを
はばかりカットや上映見送りなどすることは,
文化的な損失.
この映画を
無料配信するGyaoの見識の高さは
評価されるべきです.