チェ・ジョンハク監督『おんぶ』2017
(駐大阪韓国文化院「大阪韓国映画祭」)
主演については
「チョン・ジュノ」という名ではなく
ずっと『オクニョ』の「ユン・ウォニョン」と
おぼえてきました.
宮廷で権勢をえているのに
妻ナンジョンにはかなわない,
悪役でありながら,
人柄の良さがみえる「いい役」でした.
『おんぶ』というのは
借金で買った自分の漁船の名.
ジョンボムは妻を失ってから
息子ノマを育てています.
会社から
借金がかえせなかったら
船を回収するといわれ,
40代半ばの弟がいて
20歳の中国人と結婚したいといいだしました.
ノマは転校生に恋心をいただきます.
こどもの社会は現実の大人の社会と
複雑にからまり混在しているのです.
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家族を描くコメディは
映画一本では,ドタバタでおわったり,
ご都合主義な決着がひどかったり
しんみりしなかったり,
難しいと思います.
10本,20本のテレビドラマなら
私たちがじわじわその世界に
ひきずりこまれていって,
登場人物の心のうちをのぞいた気になるものです.
これは,家族の映画ではあるのですが
主役の中年をすぎたジョンボムの父親としての
成長を描くことで,成功しています.
現代韓国だけではなく日本でも
ひょっとしたら残っているかもしれません.
「長男」の人生に
ついてまわる責任ーー
けっして言葉にすることさえ
思いつかないような人生を
くらしている男がいるんだろうな
と思い至ることのできる映画でした.