石塚裕子訳『デイヴィッド・コパフィールド(一)』岩波文庫
ディケンズ(1812-1870)の1849-1850年の作.
「自伝的作品」ということですが,
38歳で書いていることになります.
生まれたときに父は死んではいたが
母と乳母と幸福に暮らせるはずの少年が,
母親の再婚相手により,
家から排除され,
10歳で労働者として自活させられていきます.
少年が社会にたちむかうことの非情さを
読んでいると
予測をたてるのですが
思った以上に
状況がこじれていき,
けっしていい方向ではありません.
小さな弱弱しい存在に
思いやりの心と手をさしのべるの大人は
誠意があり正直であるのですが
社会では
やはり弱く,貧しいのでした.
しかし,
そのことが打ちひしがれている主人公を
支えてくれるのです.
セーラム学園の生活には
生徒の世界と教師の世界が対立しているのに
生徒の世界は大人の世界と
相似形でしかありません.
第1巻は,
デイヴィッド・コパフィールドが
「一大決心」をするところで
おわります.