『タクシー運転手』チャン・フン監督,2017
(Gyao)
日本公開は2018年であるから,
当時
映画にもあまり興味がなく,
年に多くて2本みに行く程度.
ポスターだったか,チラシだったかで
タクシーから顔をだした男が
とっても明るかったのです.
私は,老親の介護(特養と病院には
はいっていたのですが,連続する問題で
毎日いそがしく,緊張していました)
につかれている自分が
10年以上,笑ったことがなかったような
気がして,
コメディー映画を見に行ったのです.
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『タクシー運転手』は,
民主主義社会を築き上げていく民衆と
ジャーナリストのすべき仕事の物語であり,
事実に基づく作品です.
ソウルの個人タクシーの運転手マンソプ(ソン・ガンホ)は
幼い娘と余裕のない暮らしをしていました.
ドイツ人記者ピーターを
光州まで送りとどける仕事で
光州事件にまきこまれていきます.
娘との生活のために
もがいていたマンソプ.
光州のふつうの学生やタクシー運転手たちは
軍(権力)の圧倒的な暴力に抗し,
民主化要求のデモをくりかえし
何度も立ち上がります.
病院は,軍人に殴打され,銃でうたれた死傷者で
あふれていました.
マンソプの心が少しずつ変化していきます.
タクシードライバーの自分が
韓国をよくするためにすべきこと,
ドイツ人記者がすべきこと.
韓国の新聞記者は民主主義の担い手です.
この映画では,新聞社の経営側が
権力に遠慮して,社内で記者たちを
おさえこもうとするシーンが描かれています.
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2000年くらいから
私たち日本人は
新聞などジャーナリズムを信頼することが
少なくなりました.
アメリカ映画でさえ,
ジャーナリズムは
権力(政府)のチェックや批判する
社会的責任が前提になっています.
日本のジャーナリストは
役人のように,権力者へ
配慮してるかのようにみえます.
1980年ころ,たしかに
私はこの事件を,朝鮮の地方都市での
暴動のような新聞記事をみたような気がします.
その後,しばらくして
文化人やジャーナリスト・政治家が
騒ぎ出したころには
興味がなくなっていたかもしれません.
この映画をみたことで
民主化運動によって自ら勝ち取った韓国人の民主主義を
基準とすると
アメリカの民主主義も(公民権運動から)みえてきて,
日本の民主主義が
なんとなく身にまとっていただけのものだと
いうことに
気づきました.
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1980年の私は,
光州事件を韓国の地方都市でおこった
ちょっとした暴動として
感じていたように思います.
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