志賀直哉『小僧の神様』(岩波文庫)
きょう奈良公園をぬけて入江泰吉記念写真美術館に
いくとちゅう「旧志賀直哉居宅」という標示がめにとまった.
先週だったか
『デイヴィッド・コパフィールド』の
ペゴティー兄のことば
「引き潮になったら
逝っちまいますよ」
に気が行ってしまって
一冊だけもっている
文庫がなんとなく浮かんで
何十年かぶりに読み返した.
汐のひくといっしょに
ゆくものだと話していた.
それを聞くと私は最初に
母の寝ていた部屋へ駆けて行って
ひとり寝ころんで泣いた.
(「母の死と新しい母」)
**
20年以上前と
50年前の二度,
「志賀直哉旧居」にはいって
なんの感慨もなかったし,
写真美術館にいきたかったから
はいらなかった.
※本日は「関西文化の日」で無料.
高1のとき,
「城崎にて」を見本に
作文をかかされ,
もっとも美しい日本文として
教えられていた.
しかし,
文末が単調で,退屈な文体だったし,
なんとなく
志賀直哉の倫理が
夏目漱石や芥川龍之介とはちがうような,
具体的には,
女性観にいやらしさを
感じてしまった.
**
何年かして
白樺派の作家は
ボンボンで女中と性的関係を
もって,それをわるびれずに
いること
を読んだ.
**
『小僧の神様』には
短編が11ある.
今回おもしろかったのは
「正義派」
と
「范の犯罪」.
昔きづかなかったいやな原因は
「好人物の夫婦」
であり,
若い女中との関係があいまいに
過去にはあったと述べられている.
**
志賀直哉は,この1冊しか読んでいない.