たけの湯な日記

個人的な感想ー画像の「引用」が不安です.

ウィリアム・ワイラー監督,サイコ・サスペンス『コレクター』

ウィリアム・ワイラー監督『コレクター』米,1965

"The Collector," (direc) by William Wyler

ずっとアメリカ映画だと思っていて,
今回あらためてみると
イギリスの話であった.のに,
コロンビアであり,アメリカ映画だった.

若いころ見たときの
衝撃は強かったが
何十年もたっているのに
ほとんど憶えているのに,
映画のつくりが
とても緻密なのに驚かされた.

『コレクター』フレディ(テレンス・スタンプ)とミランダ(サマンサ・エッガー))

男の立場の圧倒的優位さがカメラだけで
巧みに表現される.

フレディ(テレンス・スタンプ)は,ミランダ(サマンサ・エッガー)を
拉致し,地下室に閉じ込めた.
彼女に対して,あくまでも敬意を払い
ジェントルマンとして対応している.

彼女に軽蔑され,殴られても
紳士的であること自体が
暴力的であり威圧的であることが露骨に
描かれている.

『コレクター』フレディ(テレンス・スタンプ)とミランダ(サマンサ・エッガー))

このドラマのほとんどが
地下室にいる男女のかけひきである.

テレンス・スタンプサマンサ・エッガーの2人が
どのような俳優なのかは知らないが
異常な光景に現実感を十分もたせ
納得させられる演技でることは
誰にでもわかる.

『コレクター』ミランダ(サマンサ・エッガー)は監禁された?

 

セリフによる説明がほとんどなされず
事件が発展していくし
時間が止まっているともいえる.

ほぼすべてが
ミランダが犯人フレディを状況を詰問し
フレディはそれにしぶしぶ応えているだけだ.

あきない.

『コレクター』フレディ(テレンス・スタンプ)とミランダ(サマンサ・エッガー))

日本では,10年近く少女を拉致監禁したとか
アメリカでは,数人を 10年監禁して出産までさせた事件が
おこっている.

この映画について
私は,ラストシーンまでおぼえていたのだが
現実の事件や後年の映画とまざって
その続きを勝手に描いていたようだ.

**

フレディが変質的である演技は
生々しいが
実際に,日本でおこってきた変質的な事件は
ふつう以上に温和で女性に評判のよい男が
おこしていることを思い出しておく.

『独裁者』--チャップリン

チャールズ・チャップリン監督・主演『独裁者』1940

高齢者は

チャップリン
白黒テレビで
何度もみているのだが,
当時,こどもとしては
すでに古い感じがした.

**
毎日,アメリカのドラマやアニメを
みていたから
コメディは
「ドタバタ」において
チャップリンをこえていた.

チャップリンのドタバタは
まだ若かった私には
少し哀しく
自分自身の内面を
ふっと,あざけるような感じだった.

『独裁者』のチャップリン

大笑いではない.

テレビにでる,日本の芸人も
チョビひげをつけて
チャップリンを真似る.

私は,『独裁者』が
1940年の作品だと知らなかったし,
知っていたとしても
多くのことに気づかなかったにちがいない.

 

『独裁者』フライパン攻撃で助ける

テレビでは,たいがい
映画評論家が解説をしていたが
どんな内容だったのだろうか.

日本では
すでに彼は神格化され
チャップリン映画は
分析され,理解すべき知的対象として
扱われていた.

『独裁者』ヒンケルは多忙を極める.

非政治的なユダヤ人の床屋が
ゲットーにいるだけで
反権力になるのだが,
彼は
独裁者ヒンケルとそっくり.

チャプリンの演じ分けが
シニカルで
これまた
哀愁をおびている.

『独裁者』ゲットーのひとたち

チャップリン
歴史上,大成功をおさめた
大金持ちであったろうが,
チョビ髭とステッキ,山高帽の
貧しい男は
権力への抵抗を示していた.

天王寺おばあちゃんゾウ『春子 最後の夏』

『春子 最後の夏』人見剛司監督,2015

 

天王寺動物園のゾウについては
知らなかったが,
このゾウが死んだときは,小さなニュースになった.

横や前を何十回も通りながらも
数度だけ.

大人になってから一度,
その時はカバがおもしろかった.

『春子 最後の夏』飼育員手作りのケーキ

哺乳類は
それぞれがそうとうな水準で
知性をもつ.

私たちヒトは
彼らとどこまで交流できるか.

『春子 最後の夏』マッサージ?

65歳の花子が66歳で死ぬまでの
1年半くらいのドキュメンタリー.

ゾウの平均寿命をとっくにすぎた花子は
飼育員たちの成長をじっと
みまもってきた.

男たちは,
老いたゾウをいたわりながらも
自分たちの人生を
理解されているかのように
懸命に世話をする.

『春子 最後の夏』

みている私たちは
このゾウが死んでいく話であることを
知っているのだが
少しでも長生きすることを
願うようになる.

ほとんど声をださない
静かなゾウは
老齢の哲学者のように
ヒトを見つめつつみこむ.

『春子 最後の夏』

高度な知性をもつ動物とヒトが
どこまでコミュニケーションをとれるか,は
まだまだ経験的な範囲でしかない.

**
犬が赤ちゃんの世話をする犬や
見取り犬や盲導犬

イカにも知性があり,
飼い主ぬなついたり
人のまねができることに驚く.

ことばが通じないところが
ぎゃくに
こころが通じているような気がする.

『花子 最後の夏』たおれて立ち上がれない

花子は,さいごまで
生きようとする.

自分を支えてくれる人たちを
信じて
たちあがろうともがく.

『春子 最後の夏』

生と死のはざまで
このゾウは何を考えていたのだろうか.







 

 

 

鈴木亮平の『エゴイスト』

松永大司監督『エゴイスト』2023,東京テアトル

大阪でふつうにくらしていると
ゲイの人をみかけることはあっても
暮しで関りをもつことは
ほとんどない.

**
テレビの『昨日何食べた』は

はじめはおもしろく感じたが
私たちと何ら変わりない生き方を
示しはするが,
設定に頼っているだけに思えた.

映画『チョコレートドーナッツ』(2012)の
投げかける問にくらべれば
コメディにすぎない.

**
『エゴイスト』には原作があり
作者の自伝的小説だという.

2時間のドラマであるから
私たちは悲劇的な生き様しか
想像はできない.

鈴木亮平の演じる「斉藤」は
じゅうぶんな主役でありながら
語り役として全体を支えている.

急激に愛し合うようになった「中村」(宮沢氷魚)との
関係の深さは,リアルなセックスで
描き,
若くて「きれい」な中村の
男色売春により
同性愛の性交渉の現実を
見るものに実感させる.

**
前半はゲイの性を露骨に
物語ることで
中盤,後半の生き方の正直さを
飛躍的に真実の人間愛として認めさせる.

中村の母(阿川佐和子)の存在は
斉藤にとって
仕事をして稼ぐ根拠であり
生きる理由であったのだ.

**
LGBTを登場人物に設定することで
テーマ,ストーリーが
ある方向にすすむ.

この点では
草彅剛の『ミッドナイトスワン』(2019)
から着想をえている描写が
いくつかある.

『ミッドナイトスワン』は
性自認じたいを本人がとらえきれずに
苦悩していくのだが
『エゴイスト』は
性欲をおさえるのではなく
性交渉が避けられない,必要な行為として
繰り返される.

しかしどちらも「愛」を
普遍化しようという
構想があり,それは結実している.

**
『エゴイスト』は原作が小説であり
『ミッドナイトスワン』は映画のための脚本であるが
文学的な想像力と共時性は後者がすぐれている.



 

 

チャ・テヒョン『風と共に去りぬ!?』

キム・ジュホ監督『風と共に去りぬ!?』2012

朝鮮王の若きイ・サンの時代,
冷蔵庫などないので
採氷して氷室で保存.

暑くなると
宮廷や市場にだすという
強大な利権・政治が舞台.

ヤン(イ・ムンシク)の書店で
乱読しながら
ぶらぶらくらすドンム(チャ・ヒョン)と
西氷庫別監トンス(オ・ジホ).

2人の父親たちを失脚させるために
息子たちが投獄されます.
これは左議政チョ・ミンス(ナム・ギョンウプ)の

陰謀でした.
彼は甥に氷の独占権を与えます.

この左議政一族の
悪事にたちむかうため
ドンムが秘密チームを編成したのです.

風と共に去りぬ!?』のならず者の反逆集団

脛に傷アリで
悪の強い「専門家」たちが集められました.

ならずものの脇役たち,
10年前,油がのっていた個性派俳優がそろって
チャ・テヒョンとオ・ジホの一枚上手をいきます.

リアリティがあるのは,
こお反体制グループを支える
スポンサーがいます.

風と共に去りぬ!?』客主チャン・スギュン(ソン・ドンイル)

バカバカしいコメディ時代劇ですが

時代背景として
英祖とサド世子とイ・サンという
3代の重要な物語があります.

風と共に去りぬ!?』火薬開発のために糞尿をあつめる少年チョン・グン

珍妙な登場人物には
それぞれ歴史上の人物とからんでいるような
気がします.

韓国人ならもっと楽しめるのでしょうが
そこが
私には勉強不足のため
ドタバタを楽しむしかなかったのです.

ナニ(名子役キム・ヒャンギ)がでていて
なかなかの演技でした.






 

 

『クロッシング』--「脱北」のイメージと現実

クロッシング』2008, キム・テギュン監督

脱北については,
いくつかの映画やドラマで
見聞きしています.

想像はするのですが
私たち日本人には
現実感がありません.

***
クロッシング』の主人公,
ヨンス(チャ・インピョ)は,
元サッカー選手の鉱夫.

貧しいの生活を受け入れながらも
妊娠した妻の結核の薬を求めて
中国に密入獄します.

クロッシング』ヨンス(チャ・インピョ)の妻(ソ・ヨンファ)とジュニ

脱北は
妻を救うためでした.
生きるためであり,
政治体制を選んだわけではありません.

いま暮らしている場所にも
幸せがあるはずです.

クロッシング』サンチョル(チョン・インギ)の家族との楽しい時間

北朝鮮から朝鮮族自治区に入り
公安から逃れて
知らないうちに「脱北」に
まきこまれてしまいます.

クロッシング』息子ジュニ(シン・ミンチョル)

ジュニは母を失い放浪することになります.

落ちた食べ物をあさっている
サンチョルの娘ミソン(チュ・ダヨン)と
であいます.

描かれている北朝鮮の人々の
暮らしぶりは
私たちがきいている
餓死者が多数出ている
イメージのとおりでした.

物語は想像したように
厳しい世界を貫いていきます.

クロッシング』強制労働所で働くジュニとミソン

韓国で
クロッシング」とは何を意味するのかは知りません.

ひとりぼっちになってしまった
父のあとをおって
北朝鮮から中国,モンゴルを横断していく
息子ジュニの絶望的な脱北のようであるし,

ヨンスとジュニの
大規模な行き違いでもあるし,

冒頭で偶然手にした
小型の聖書に導かれていく
暗示としてのクロスかもしれません.

クロッシング』モンゴル自治区にむかおうとするジュニたち

日本の庶民生活も
まずしい方向にむかっているのが
気になります.

世界から孤立するような
お国柄からぬけきらないうちに
すでに
アジアから孤立していると思うのは
私たち老人だけなのでしょうか.

 

イ・ソンギュンの『キリング・ロマンス』---韓国映画祭の慧眼

イ・ウォンソク監督『キリング・ロマンス』2023, 韓国

〈駐大阪韓国文化院「大阪 韓国映画祭」〉

私は,
イ・ハニを『エクストリーム・ジョブ』で
衝撃的に見直しました.
『キリング・ロマンス』はさらに前進している
のですが
それがイ・ソンギュンの変態的な演技によって
きわだったものになっています.

『キリング・ロマンス』新興財閥のジョナサン(イ・ソンギュン)が愛を歌う

昨日のニュースで
「『パラサイト』の俳優イ・ソンギュンさん死亡」
を知りました.

薬物使用とかで,映画・ドラマ
など降板というのを知っていました.

『キリング・ロマンス』をみて
やっぱり,
すごい役者だと感心していて,
復活を期待していたのですが,
とても残念です.

『キリング・ロマンス』大スターのヨレ(イ・ハニ)が自身のCMの真似をする

落ち目大スターのヨレ(イ・ハニ)と
南の島で財閥のジョナサン(イ・ソンギュン)が出合い,
恋に落ち,結婚し,ソウルの大邸宅にくるのですが,
ヨレは,屋敷にとじこめられて暮らすだけの日々になります.
その窮地を救おうとするファンが
3度大学受験で失敗したボムウ(コン・ミョン).
彼は,三度の受験失敗で
動物と話すことができたのです.

映画の中で,多浪生は
それぞれ特殊能力を獲得する,と語られています.

『キリン・ロマンス』地獄サウナでジョナサンを殺そうとたくらむヨレとボウム

とんでもなく設定でありながら
サイコパスな金持ちの夫のモラハラ
ファンクラブのオタクさ.

本筋にはやや関係のうすい
「地獄サウナ」のコマーシャルーー
ほんとにありそうなローカルCM.

『キリング・ロマンス』地獄サウナのCM.社長(オ・ジョンセ)

そして,ミュージカル風な挿入歌の
演出のたくみさ.

すべてが
ばかばかしい,
ブラックなコメディにしあがっています.

『キリング・ロマンス』SF映画に出演するヨレ(イ・ハニ)

イ・ハニは『エクストリーム・ジョブ』まで
あまり興味がありませんでした.

イ・ソンギュンについては『王様の事件手帖』まで
は,なんとなく鼻についたのが
『わたしのおじさん』でやっと
そのすごさに気づきました.

どうも,
見る目がない,というか,
ちゃんとした評価ができる鑑識眼
ないようです.

**
ニュースをみるかぎり
自殺ということで,
その追い詰められかたというのが
日本,韓国とも
似ているような気がします.

韓国の芸能人のほうが
うわさなどで
倫理的にたたかれる度合いは
えげつないようにみえます.
※日本なら,そんなもんだろう,
と思ってすませています.

近年,すばらしい演技をみせてくれた
人物だからこそ
取り調べがおわったあと
ふと,

自己の世界の中で
外部とのいざこざを
なんとか始末しなければならない状況に
至ったようですが,
それは
誰にもわからないでしょう.

残念です.ほんとうに.

『キリング・ロマンス』は
映画として,完成度の高いものでした.

『キリング・ロマンス』ジョナサン(イ・ソンギュン)