たけの湯な日記

個人的な感想ー画像の「引用」が不安です.

『コンフィデンシャル/共助』--兄貴分と弟分ー男の世界

『コンフィデンシャル/共助』2017

(Gyao)

北の刑事チョルリョン(ヒョンビン)と
南の刑事ジンテ(ユ・ヘジン)が,
お互いをあざむきながらも
やがて信頼関係をきずき,
それぞれの危機を救う,
というバディー・コップもの.

『共助』南の刑事(ユ・ヘジン)と北の刑事(ヒョンビン)は共同捜査をする

痛快アクション映画ですが,
ユ・ヘジンのコメディっぽさが
リズム感あるストーリーに
しています.

**

キム・ジュヒョクが演じるチャ大佐が
偽ドルの銅原版を奪い,
グループで脱北します.
それを南北共同捜査するという設定.

『共助』部下をも殺す,チャ大佐(故キム・ジュヒョク

チョルリョンは
ソウルにきて,
その豊かさにおどろいているのですが,
ジンテは韓国の刑事の給与の低さ
(年収で300万ウォン)をぼやきます.

『共助』ジンテの妻(チャン・ヨンナム)とその妹(イム・ユナ)

ジンテはチョルリョンに
北は飢えている人が多い,
南の方が豊かなのだから
このまま脱北するよう軽口をたたきます.

チョルリョンは

南は一部の大金持ちと
貧しいふつうの人たちがいて不公平だ,
北は
だれもが等しく貧しいから
幸せなんだ,
というような反論をします.

**
北朝鮮の特命をおび
韓国の警察と公式に共同捜査を
していくチョルリョンが
だめ刑事のジンテのアパートに
抵抗なく
やっかいになる
ということから滑稽です.

『共助』ジンテの娘ミナとチョルリョン

ジンテ一家とチョルリョン,
チャ大佐グループとチョルリョン.

明暗がチョルリョンとジンテの
凸凹コンビが
痛快な物語をつくりあげます.

『共助』ユ・ヘジンの決死のアクション












 

 

 

 

 

『私たち,家族です』--家族ーかってな誤解の積み重ね

『私たち,家族です』2020,韓国

(Gyao)

私は,Netflixやらがわからないのと
金銭上
Gyaoの無料配信分で満足しているのですが,
スタジオドラゴンの
話題作をみることが少ないようです.

『私たち,家族です』は
韓国のケーブルテレビで放送されたものということ.

『私たち,家族です』チャニョク(左;キム・ジソク)とウニ(ハン・イェリ)

私のすきなハン・イェリとキム・ジソクが
出演しているので
見ることにしました.

すると,
もひとりチョン・ジニョンがでていて
続けてみようと決心.

**

夫サンフン(チョン・ジニョン)が
妻ジンスク(ウォン・ミギョン)から
「卒婚」をいいだされます.

長女(40手前?);ウンジュ(チュ・ジャヒョン),夫は医師(キム・テフン)
次女(30代前半);ウニ(ハン・イェリ),出版社勤務,独身.一人暮らし.
息子(20代);ジウ(シン・ジェハ)「ウリ・マンネ(私たちの末っ子)」.

『私たち,家族です』まだ若いチョン・ジニョンのみごとなおやじ.

子どもがそれぞれの生活を
もっていて
老年である妻にとって
夫は,みるのもいやな存在なのです.

日本の庶民の家庭と
かわりません.

チョン・ジニョンは
(私にとっては)
まだまだ若い役者ですが,
服装,その言葉,行動ともに
じぶんをみているようなのです.

もう第1話から

「私にとっては」主役は
この(まだ少し若い)老夫婦なのです.

ほんとは,次女のウニが主役であり
彼女からみた家族の姿なのですが.

 

『私たち,家族です』山中で頭を打って入院中のサンフン

そして,このまだ少しは若い,
ということが
この物語を深刻に,そして
人間的に進めていく設定なのです.

『私たち,家族です』サンフンとそのこども3人.



40年いっしょにくらしてきた
家族でも
そんなにおおくのことを知っているわけでもないし,
理解よりも誤解の方が多い―

私たち男は
家族を養う社会をしくんできたのに,
たいはん
下層の人間として,
家族をあとまわしにして
働かされてきたのです.

**
ずっといっしょに暮らしてきたからこそ
誤解があふれていて
それぞれががまんして
ほんとのじぶんの気持ちを
押し隠す人生になっています.

『私たち,家族です』ゆとりある長女夫婦.

家庭を持った当初は
こんなに
息苦しいものになるとは
予想しませんでした.

何十年も前のことを
思い出すし,
こどもが幼いころは
ほんとうに楽しかったように
思い返すこともあります.

**
孤独なサンシクが
ひとり夜間登山で
頭をうち,
22歳の心にもどります.

そこから
老いた自身と妻
そして成長したこどもたちを
とらえなおし
家族それぞれが
サンシクを軸に
じぶん自身をみつめ,語りはじめるのです.

『私たち,家族です』サンシクとウニ,それまでは話すこともなかった

このドラマは
私の感傷的な予想のようには
展開しませんでした.

もっと,
現代社会で実際的に
家族をとらえ
ともに生きていくヒントが
いくつも示されています.

老人には残された年月しかないし,
こどもたちは
自分の生活でせいいっぱい.

バラバラにみえても
助け合うことはできるはずです.









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ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド(五)』(岩波文庫,全5巻)--調和をもとめる世界観

石塚裕子訳『デイヴィッド・コパフィールド(五)』(岩波文庫

残念というか,こまったことに
第5巻は書店ではみつからなかった.

ネットでみると
そもそも第1巻から絶版.
小さな書店に残っているかもしれない程度.

中古で入手するしかない.
※近所の図書館には,岩波文庫はほとんど
購入されない.

新潮文庫版は売っているようだ.

**
ディケンズの「自伝的長編」ということだが
想像では,自伝からはほど遠い.

エミリーを
あてもなくさがす旅を続ける

ペゴティー兄の姿は,
私たちがもっとも認めたい
人間の強く美しい愛
であるし,

エミリーに裏切られた
許婚ハムは.
エミリーへの思いと
ステアフォースに対する姿勢は
悲劇的であるのに
崇高な精神をもっていた.

『デイヴィッド・コパフィールド(五)』家族と絆を深めるミコーバー(中央)

借金に苦しみ,
頼ったユライア・ヒープに
騙され,搾りつくされているミコーバー氏に
困窮の状況に
残されていたものは
絶対的な自尊心と良心と
守るべきひとたちへの愛であった.

資本主義が産業を巨大化しつつあった
19世紀中葉のイギリス社会では
この3人は
最下層に属し,
さらに
不幸のどん底に突き落とされた人たち
であった.

**
物語のはじめ,
パフィールドが幼かったころ
母の葬儀をおこなった
オーマーさんは
今は老いて
車いすでくらしている.
※19世紀だから,
木椅子に簡素な車輪をつけたような
ものをイメージしました.

人生の帳尻を合わせる,
そんな時が
近づいてきますとね,

人間どんなに達者でやってたところで,

よりにもよってまた,

カタカタと音を立てる
人生二度目の乳母車に乗せられ,
引きずり回される身にもなりますとね,

できることなら,
親切の一つも施して,
大喜びしたいものなんですよ.
(p.63)

文章家として
名声を得つつあるコパフィールドに言う.
「ですからね,
あんたさんが
正しいって思うことでしたら,
何だってそれに従いますんで」
「どこへわたしの気持ちを
一口送ったらいいのか,
ご一報くださいね」

彼らにはみえていたし
わかっていた.

だから
私たちは共感できる.

**

シルクハットをかぶったジェントルマンたちは
自分たちに危害をおよぼした
犯罪者の(するはずもない)「改悛」を
めざす制度―「腐った道楽」(p.367)

に気まぐれな興味をしめすだけだった.

『デイヴィッド・コパフィールド(五)』服役中のユライア(左)とリティマ―(右)

エミリーやマーサは
イギリスの社会では
生きることができなかったし,

返済不可能な債務をかかえた
ミコーバー一家も
イギリス国内でいきる希望もなかった.

このどん底の人たちをひきつれて
ペゴティー兄は
新天地オーストラリアへむかった.

『デイヴィッド・コパフィールド(五)』船内での別れの握手コパフィールド(左),ペゴティー兄(右.その右手前がミコーバー)

読者は,
「赤ん坊奥さん」のドーラが
衰弱していき,
すぐに死ぬことを予感できる.

主人公は
長い旅にでて,
じぶん自身をとりもどしていく.

そこは,男のつごうによる
じぶんへの言い訳だ.

じぶんが愛してきたのは
アグネスだった
としっかり自覚したのだ.

『デイヴィッド・コパフィールド(五)』十年以上すぎて,ペゴティー兄が一時帰国した

【追記】
この1年でディケンズの3作品を読んだが
面白さの順位として今のところ

①『荒涼館』(2022読んだ)
②『大いなる遺産』(2022)
③『クリスマス・キャロル』(中学生のとき)
④『デイヴィッド・コパフィールド』(2022)

⑤『ピグウィック・ペイパーズ』(高1のとき)


⑤はおもしろさがわからなかっただけかも.

 

 

 

『王様の事件手帖』若き王イェジョンは19歳で死んだが

イ・ソンギュンの『王様の事件手帖』ムン・ヒョンソン監督,2017

(Gyao)

深刻にはならずに,
むねがすっとする映画.

もし私がまだ若いとしたら
疲れた時,こんな映画を
映画館ではなく,夜中にひとりでぼんやり
みたい.

王様の事件手帖』王(イ・ソンギュン)と史官(アン・ジェホン)

科挙トップ合格の
若き史官(王様の日々の言動を記録する係)が,
独創的な王に気に入られ,
側近(隠密)となり,
怪事件を解決していく.

王様の事件手帖』奴婢の身分から軍事権力をもったナム将軍(キム・ヒウォン)

王失脚・殺害をはかる士大夫(サデブ;両班)たちの
陰謀による危機から
どう逃れ,王を救うことができるか.

**

私たちは,アン・ジェホンのとぼけた表情を
もっともっと,と期待する.

王様の事件手帖』行動的な王(イ・ソンギュン)

権力の闇には冷たい状況が用意されている.
王から兵曹参判に任命されるナム・ゴニ将軍.
(たぶん)奴婢からはいあがって武官になるには
戦功をあげることと
両班たちにあえて利用されてきたのだろう.

キム・ヒウォン.
いつも
卑怯でとぼけた感じでなぜか人間味もある俳優が,
王様の事件手帖』では寡黙な力強い演技をみせる.


**
とにかく,痛快なコメディー.



ソン・ガンホの『パラサイトー半地下の家族』

アカデミー賞受賞作品『パラサイト』ポン・ジュノ監督,2019

ぎっしりつまっていて
ひとりひとりが
いろいろ考えることができる.

それでいて
展開が予想できず,
はらはらし続ける.

世界共通のテーマというより
韓国人独特の世界観を
切り取ってみせることで
普遍的な問題提起をされたような
感覚.

『パラサイト』豪邸でくつろぐ一家4人

しかも
美しい映像.

**
『パラサイト』の
カンヌ映画祭パルムドールアカデミー賞の受賞は
韓国映画全体の水準の高さを
示しているし,
当然,
ポン・ジュノの監督してきた映画の
すばらしさが認められたともいえる.

『パラサイト』内職のピザ箱をひきとりにきた社長と家族4人

シーンそれぞれに問題提起がある.

さいごのシーンまできて
ストーリーは完結するのだが,
観客は
いくつかのシーンをふりかえり
ポン・ジュノ監督が提示した謎を
再び自由に考える楽しみをもつ.

『パラサイト』IT企業の社長(イ・ソンギュン)と妻(チョ・ヨジョン)

私は
『南極日誌』(2005)でソン・ガンホを憶えた.

映画自体のリアリティの一方にある感覚(観念性ともいうべきか)が
強すぎて,
単純な冒険物語としては理解できなかった.

グエムル』(2006)は怪物ものとして見た.

あとでツタヤで『殺人の追憶』を借りたときも
ひとりの監督の作品としてつながらずに,
ソン・ガンホの出演映画という理由だった.
※『爆裂野球団』『大統領の理髪師』も同時に借りた.

『パラサイト』一家の前にずぶぬれカッパの元家政婦(イ・ジョンウン)が現れる

格差社会を題材にしたブラックコメディーだから
日本人の私には
ふざけて描かれているのか
まじめに言及されているのか
わからない
まんが的,
象徴的なことばやシーンがいくつもある.

台湾カステラでの失敗
インディアン趣味
韓牛のチャパグリ(汁なしインスタント麺)を食べる金持ち

なんとなく,
本筋と関係しているようにも思える.

『パラサイト』運転手たちの食堂で食事をする一家

わからない映画ではなく,
細かいところまで
何か意味があるのだろうと
詮索したくなる映画.

【追記】
公開当時,見ようと思っていたら
いつのまにか映画賞を受賞していて,
映画館にいったら
びっくり.

韓国映画に長い列ができていて
満席なのを
初めて見た.


『復讐の女神』ーー韓国流ミス・マープル

チョン・ウンインの刑事がしぶい『復讐の女神』2018

自分の
娘が殺されたのに
犯人として逮捕され,
9年後,
真犯人をみつけるために脱獄した
ミス・マ(キム・ユンジン).

『復讐の女神』脱獄のためのトレーニン


ミス・マープルとおなじく
椅子に座り,
編み物をしながら
近所の人たちの噂話に耳をかたむけます.

**
謎を解くミス・マが
脱獄,指名手配であるという
意外な設定が
マープルシリーズとは異なり,
主人公の安全を保障しません.

彼女を追う,信念の刑事
ハン・テギュ(チョン・ウンイン).

それは,権力の網でした.

『復讐の女神』刑事たちを叱咤する部長検事(中央;キム・ヨナ

チョン・ウンインの演じる刑事は
職務倫理として
正しさを求めています.

9年前の逮捕がまちがったものではないか
悩みながらも
ミス・マが脱獄犯だと疑います.

**
チョン・ウンインという名前も
おぼえられずに,
『善徳女王』2009で
古代朝鮮の新羅を牛耳る側室ミシルの弟「ミセン」
として
私は思い出してきました.

『刑務所のルールブック』2018では
歌唱シーンがすばらしく,
ストーリーをふかめるものでした.

彼が
裏のない,権力におもねない
実直な正義であるからこそ
さえない
はみだし刑事として
リアルな演技をみせてくれます.

『復讐の女神』の刑事役,チョン・ウンインの切れのあるアクション




jazzから遠くーー『Blues for Dracula』ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズ

フィリー・ジョー・ジョーンズ『ブルース・フォー・ドラキュラ』1958,Riverside

参考書にのっている
ジャケットのおもしろさで選びました.

『ブルース・フォー・ドラキュラ』

 

1. Blues for Dracula  (Johnny Griffin
2. Trick Street  (Owen Marshall) 
3. Fiesta  (Cal Massey, arr. Philly Joe Jones ) 
4. Tune-Up  (Miles Davis)
5. Ow!  (Dizzy Gillespie

1曲目と3曲目が
どこかで聞いたことがあるような.
似ているものを
きいたのかも.

**
フィリー・ジョー・ジョーンズ
ドラマー.

私がドラマーででてくるのは
ジンジャー・ベーカー
カール・パーマ
ロジャー・テイラー
フィル・コリンズ

それと
ハナ肇
フランキー堺


こどものころ
テレビの年末年始の特別番組で
コメディアンだった人が
かっこいい,
ドラムソロをきかせるのです.

6年生のとき
鼓笛隊に選ばれたのがうれしくて
小太鼓の練習をいっしょうけんめいしました.
**
『ブルース・フォー・ドラキュラ』は
ききやすいです.

まだ,ジャズのすごさに
おいついていません.
努力はしています.



 

 


Philly Joe Jones - drums
Nat Adderley - cornet
Julian Priester - trombone
Johnny Griffin - tenor sax
Tommy Flanagan - piano
Jimmy Garrison - bass