たけの湯な日記

個人的な感想ー画像の「引用」が不安です.

『ビニールハウス』--「半地下はまだマシ」

イ・ソルヒ監督『ビニールハウス』韓国,2022

「半地下はまだマシ」とチラシでうたっているのは,
たぶん,大半の日本人が,
韓国映画なら『パラサイト』くらいしか知らないからだろう.

キム・ソヒョン主演と宣伝しても
そんなに集客できあそうにない.

「半地下はまだマシ」というぎりぎりのキャッチコピーは
配給元ミモザフィルムがよく考えたと思う.

『ビニールハウス』無料のグループセラピー.

地震で家を失い
自分たちのビニールハウスに避難した人たちを
私たちは知ったが,
それは緊急事態としてとらえていた.

映画の主人公ムンジョン(キム・ソヒョン)は
他人のビニールハウスを,
借りて日常を送っている.

彼女は,中年の下り坂.
訪問ヘルパーを仕事とし,
息子が少年院から出てくるのを待つ.

『ビニールハウス』認知症の老妻(シン・ヨンスク),盲目の夫(ヤン・ジェソン)

いくつかの苦境にたえることが
自分の顔や身体を強くぶつ動作に
つながっていることが
わかってくる.

『ビニールハウス』ムンジョン(キム・ソヒョン)にうちとけるスンナム(アン・ソヨ)

母息子でくらせるアパートを契約しようと
家さがしを続けていた.

認知症の老妻をもつテガン(ヤン・ジェソン)が盲目であること,
さらに認知症初期段階であること,
自殺予防のグループ・セラピーでであった若いスンナム(アン・ソヨ)が
軽度の精神障害であること,
これらすべてが,偶然でありながら
同時に起こりうる設定を仕組んでいる.

『ビニールハウス』唯一の収入源.認知症の老女からの攻撃.

貧困は
社会の最底辺層であることを意味し,
女性であり,母親であること.

サスペンスにありがちな
そんな偶然ないだろう,というものではなく,
貧困を根にした,
そのような出来事は
偶然かつ必然という「連鎖」である.

ひとりの人が,不幸を一手にひきうけることは
よくあることだ.

一つのことを守るために,
すべてをうしなってしまう.

『ビニールハウス』ムンジョン(キム・ソヒョン)とビニールハウス

キム・ソヒョンについては
ドラマ『SKYキャッスル』の入試コーディネーターという
強烈な役で
こわい中年女性のイメージがあったが

『ビニールハウス』の主役として
孤独で不幸な女性を
多面的に演じている.

***
たぶん低予算であっただろうが
ねりにねった脚本である.

日本公開にあたり,
有名人が絶賛の宣伝であるが,
そのストーリーにひっぱられて
説明しすぎている部分もある.

ただし,ラストはすぐれていた.