アン・テジン監督『梟ーフクロウー』2022
これは,おもしろかった,
すべての要素がむすびついていくのが
巧み.
史実を題材にした娯楽映画ではあるが,
観客が
席をたつとき,感銘したことがあきらかだった.
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リュ・ジョンヨルが,
社会の底辺に生きる盲目の針師.
御医によりひきたてられて,宮中に入る.
そこで「目撃」した.
昭顯世子(ソヒョン=セジャ)の毒殺事件を題材に
その目撃者が盲目であった,という
とっぴょうしもない着想がむしろ
事件の全貌を実際的に構成している.
ミステリーとして
あとで,あれも謎だったんだという
自分の見方が偏見によるものであることに
気づかされるのも,
見事というしかない.
ギョンスだけではなく,
見ている自分は,何をみていたのか.
社会批判をしている作品ではなく,
完璧なエンターテインメントであるのに
歴史を動かしている権力の由来するところを
思い知ることができる.
権力者の陰謀を
奴隷階級の盲人が暴くことはできない.
やはり
権力に委ねなければならない.
政治の極限は
他者の命を奪うことであることを
描いている.