シェイクスピア『ヴェニスの商人』岩波文庫
戯曲だし,
なんとなく知っているから,とか
古いから,とかで
シェイクスピアはさけてきた.
映画『ジュリアス・シーザー』を何十年もして
テレビでみてから,文庫本を読んだくらい.
それ以前は,毎回,退屈で失敗.
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歳のせいか,今回はすっと読んだ.
やはり
ほとんど知っている設定とストーリーではあるが,
舞台を抽象的に想像して
読むと,臨場感も伝わってくる.
召使ランスロットは,道化役で
だじゃれー中野好夫の注をみると,翻訳困難ー
と,野卑な演技で
観客(中野の用語では「看客」)を劇に
入り込ませただろうし,
アントーニオの友達連中ののほほんとした
会話にくらべ,
ポーシアと侍女,彼女と夫たちのやりとりの
女のテンポのよさ.
あるいは,第四幕「法廷」は
どうなるかわかっていても緊張してしまう.
ポーシアに求婚するモロッコ王,アラゴン王の
金,銀の箱の選択は
男のおろかしさを描いている.
それ以上にバッサーニオが鉛を選ぶ愚鈍さは,
後に法廷で,
偽の法学博士,書記の明晰さとコントラストにより
演劇性を高めている.
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何万回,何十万回と演じられてきた舞台を
ぜひみたい.
やはり
英語ができなければ,
この絶妙な喜劇は
味わいが薄くなるのだろう.