孫娘が,おばあちゃんといった.
もうろうとしていた視線が合った.
涙がでていた.
口をあけようとしていた.
すこしばかりの涙が止まり,
にこりとしたようだった.
娘に,
おばあちゃんをさすってやりなさい,といった.
ペットボトルの左腕を娘はさすった.
泣くのを我慢しているのがわかる.
こちらをみた.
涙をながしていたようだった.
父は,入り口のドアをみていた.
孫をみてわらった
やはりわらったようだった.
そしてめをとじる.
娘はおどろいて手をはなす.
冷たい手だった.
めをあけたので,娘は思い直して
ばあさんの手をさすった.
母は私の方をみた.
だいじょうぶやから,ねとき.
といったが,
怪訝な表情.
だれでしたかな,というような.
けげんな表情
目を大きくみひらいた.
娘を私とみまちがえていたのかもしれない.
その横に現在の私がいる.
マスクをとってみせた.
それでもきづかない.
ねとき,私はいった.
父が,おってもしかたがないから
帰ろうかといった.
ドアのガラス窓から母がみえる.
首をあげようとしている.
私たちをたしかめようと思ったのだろう.
娘ともどったら,
安心してめをとじた.
今度は私たちは,ひきかえさず病院をでた.
次のバスまで50分
私は阪急電車ですぐ帰れるが,
父はバスをまたなければならない.
もう帰れといい,あらぬ方向に歩いている.
私たちがいなければ歩いて帰るかもしれない.
しかし反対方向だ.
私は娘と,老父をみていた.
歩道橋から先回りをして,父をおいかけた.
園芸屋がしまっている.
歩道橋から3人でながめた.
バスまであと15分.
私と娘は電車にのる.
おばあちゃん「ありがとう」っていってたで
マンションまでの帰り道,
小学校の横で,娘が
おばあちゃん「ありがとう」っていってたで,
といいだす.
私は,？？？
なんでわかった？
口をうごかしてたやろ.
たしかに動かしていた.
娘は私の老母の姿をみてなくのをこらえていた.
帰ってから,勉強をするふりをして,泣いていた.
