寺島しのぶ『キャタピラー』2010
若松孝二監督『キャタピラー』2010
GYAO
『実録・連合赤軍』2008をみたので,
『キャタピラー』をみた.
私はこの設定を
山上龍彦の『光る風』で読んだような記憶がある.
優秀な兄が,四肢を喪失して
戦場からもどってくる.
その後は憶えていないし,
まんがの本じたいなくしてしまった.
これが
江戸川乱歩の『芋虫』1929にさかのぼることを,
今回はじめて知った.
***
『キャタピラー』は日中戦争からの
15年戦争の日本を描いている.
1940年
燃える家屋のなか
九蔵が若い中国人女性をおいかけ
強姦するシーンからはじまる.
彼は,四肢と聴覚,声を失い
もどってくる.
国家からは
生ける「軍神」として讃えられ,勲章をもらう.
シゲ子は
食欲と性欲だけの芋虫の
めんどうを1人でみなければならない.
「お国のため」であった.
***
大西信満は時々,うなり声をあげることが
できるが,
四肢を喪失しているからみぶりはほとんどできず
顔だけで,欲望や絶望を表現しなければならない.
寺島しのぶは,その
「食べて」「ねて(性欲)」のめんどうをみるのだが
もはや夫ではなく「芋虫」でしかない.
その異常な事態にたいし,
人間のエゴイスティックな内面を
表出していくことで
暴力をふるう力関係の逆転にきづく.
これも1つの戦争映画である.