長門裕之の『豚と軍艦』日活,1961
(Gyao)
「これはすべて架空の物語である」
と自慢できるくらい
リアリティのある映画.
横須賀.
米軍の残飯を利用して
養豚で大儲けをはかるやくざ達.
さんした,キンタ(長門裕之)と
恋人,春子(吉村実子)の生きる姿に焦点を
あてて戦後の日本を描いている.
**
たぶん,であるが,
1961年に私が映画館にいっていたら
笑いと涙で大満足して友達に語っていただろう.
しかし,みたのは30年後,
バブル経済と
取り残された自分たちの
ずれに
大坂志郎,加藤武,丹波哲郎と
西村晃の
構図を重ねてしまい
現実的な力をもつ映画に見えた.
いまみると,
笑えるコメディ.
しかし,それ以上に
キンタと春子の生き方は
生命力にあふれていて
若々しく,美しい.
男たちがいままで築いてきた権威とシステムは
崩壊しているのに,
いまだ
いいかげんなもので
いんちきでこっけいであることが
スリリングかつコミカルに
展開されていく.
米軍の残飯で肥えている豚たち.
**
『キューポラのある街』のジュンと
『豚と軍艦』の春子は
(私たち男には)全くちがう個性にみえる.
戦後の日本社会をしっかりみすえて
自分のあしで歩き進んでいく姿を
私たちは確認しておくべきだ.
【私の記憶】
(テレビのころ)
楽しかった「日本映画」は
若大将やクレイジーキャッツ.
長門裕之はいろんな映画によく
でていたけれども,
興味をひきませんでした.
***
(働いてから)
『バージンブルース』『赤ちょうちん』
の中年男が
私たち男がひた隠しにしている
心の底をあらわしているようで
ぞっとしたのです.
**
(レンタルビデオ時代)
『太陽の季節』をみて
『豚と軍艦』も借りました.
(今)
長門裕之・津川雅彦兄弟を
すごいと思うようになってしまいました.