渡辺謙と三浦友和『沈まぬ太陽』2009, 角川映画
202分の大作.
長い感じがしなかった.
14年前の日本映画に
このような社会的な姿勢--
山崎豊子作品を映画化できる
意欲があったことを示す
秀作.
国民航空の労働組合委員長の
恩地(渡辺謙)が
じぶんの信念にしたがっていきるドラマ.
巨大企業と政府が
個人の良心や国民の命を
踏みにじっている日本の現実を
描いている.
恩地は,
組合員に対する報復人事をやめさせる条件の
つもりで,2年間の
カラチ支店の移動を受け入れた.
それから,日本にもどれない
海外勤務が繰り返される.
その間,会社側は第二労組をつくり
労組は骨抜きにされ
書記長(香川照之)は,
閑職においやられる.
この映画では,三浦友和が
労組を裏切る副委員長として
個性をうちけした
ふつうのサラリーマンとして,
政治手腕でもって出世をしていく.
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主人公の恩地は
実在した日航の労組委員長(小倉寛太郎)をモデルにしていて
山崎豊子は本人に取材している.
御巣鷹山の被害者救済のために
尽力した姿は(小倉氏ではない)複数の人の
エピソードを恩地の像にしたらしいが,
たしかにそこに人間がいる.
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この映画で出色の演技は
香川照之といいたいが
(私の全然知らない)
恩地の息子を演じた役者.
ただ一人,大柄の顔の濃い渡辺謙と
並んでも
それ以上に存在感があった.
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巨大な組織や国家のもつ権力に
対抗するには
このような映画によって
現実を把握することから
はじめるしかない.