『クロッシング』2008, キム・テギュン監督
脱北については,
いくつかの映画やドラマで
見聞きしています.
想像はするのですが
私たち日本人には
現実感がありません.
***
『クロッシング』の主人公,
ヨンス(チャ・インピョ)は,
元サッカー選手の鉱夫.
貧しいの生活を受け入れながらも
妊娠した妻の結核の薬を求めて
中国に密入獄します.
脱北は
妻を救うためでした.
生きるためであり,
政治体制を選んだわけではありません.
いま暮らしている場所にも
幸せがあるはずです.
北朝鮮から朝鮮族自治区に入り
公安から逃れて
知らないうちに「脱北」に
まきこまれてしまいます.
ジュニは母を失い放浪することになります.
落ちた食べ物をあさっている
サンチョルの娘ミソン(チュ・ダヨン)と
であいます.
描かれている北朝鮮の人々の
暮らしぶりは
私たちがきいている
餓死者が多数出ている
イメージのとおりでした.
物語は想像したように
厳しい世界を貫いていきます.
韓国で
「クロッシング」とは何を意味するのかは知りません.
ひとりぼっちになってしまった
父のあとをおって
北朝鮮から中国,モンゴルを横断していく
息子ジュニの絶望的な脱北のようであるし,
ヨンスとジュニの
大規模な行き違いでもあるし,
冒頭で偶然手にした
小型の聖書に導かれていく
暗示としてのクロスかもしれません.
日本の庶民生活も
まずしい方向にむかっているのが
気になります.
世界から孤立するような
お国柄からぬけきらないうちに
すでに
アジアから孤立していると思うのは
私たち老人だけなのでしょうか.