イ・ウォンソク監督『キリング・ロマンス』2023, 韓国
〈駐大阪韓国文化院「大阪 韓国映画祭」〉
私は,
イ・ハニを『エクストリーム・ジョブ』で
衝撃的に見直しました.
『キリング・ロマンス』はさらに前進している
のですが
それがイ・ソンギュンの変態的な演技によって
きわだったものになっています.
昨日のニュースで
「『パラサイト』の俳優イ・ソンギュンさん死亡」
を知りました.
薬物使用とかで,映画・ドラマ
など降板というのを知っていました.
『キリング・ロマンス』をみて
やっぱり,
すごい役者だと感心していて,
復活を期待していたのですが,
とても残念です.
落ち目大スターのヨレ(イ・ハニ)と
南の島で財閥のジョナサン(イ・ソンギュン)が出合い,
恋に落ち,結婚し,ソウルの大邸宅にくるのですが,
ヨレは,屋敷にとじこめられて暮らすだけの日々になります.
その窮地を救おうとするファンが
3度大学受験で失敗したボムウ(コン・ミョン).
彼は,三度の受験失敗で
動物と話すことができたのです.
映画の中で,多浪生は
それぞれ特殊能力を獲得する,と語られています.
とんでもなく設定でありながら
サイコパスな金持ちの夫のモラハラや
ファンクラブのオタクさ.
本筋にはやや関係のうすい
「地獄サウナ」のコマーシャルーー
ほんとにありそうなローカルCM.
そして,ミュージカル風な挿入歌の
演出のたくみさ.
すべてが
ばかばかしい,
ブラックなコメディにしあがっています.
イ・ハニは『エクストリーム・ジョブ』まで
あまり興味がありませんでした.
イ・ソンギュンについては『王様の事件手帖』まで
は,なんとなく鼻についたのが
『わたしのおじさん』でやっと
そのすごさに気づきました.
どうも,
見る目がない,というか,
ちゃんとした評価ができる鑑識眼が
ないようです.
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ニュースをみるかぎり
自殺ということで,
その追い詰められかたというのが
日本,韓国とも
似ているような気がします.
韓国の芸能人のほうが
うわさなどで
倫理的にたたかれる度合いは
えげつないようにみえます.
※日本なら,そんなもんだろう,
と思ってすませています.
近年,すばらしい演技をみせてくれた
人物だからこそ
取り調べがおわったあと
ふと,
自己の世界の中で
外部とのいざこざを
なんとか始末しなければならない状況に
至ったようですが,
それは
誰にもわからないでしょう.
残念です.ほんとうに.
『キリング・ロマンス』は
映画として,完成度の高いものでした.