たけの湯な日記

個人的な感想ー画像の「引用」が不安です.

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド(三)』運命をたどること――スティアフォースとユライア・ヒープ

岩波文庫『デイヴィッド・コパフィールド(3)』石塚裕子


ディケンズで「ユーライア・ヒープ」という名をみたとき

つかみどころのない
退廃的なロック・バンドを思い浮かべた.

どんな曲をきいたのか覚えていないけど,
とにかく
古典に由来があったのか,とうれしかった.

『デイヴィッド・コパフィールド』のコパフィールドに握手するユライア・ヒープ(左端)

小説の後半にはいり,
いくつも用意された人間関係が
重要な事態を困難な局面に
もっていく.

前半で抱いた運命の不安さが
現実味をおびてきた.

**
パフィールドは

10歳のころと同じように
煩悶しながらも
若者ゆえに
考えがいたらない.

彼には
たいせつなものを
みてほしいのに.

**
ミスター・スペンロウの娘を
みた瞬間に虜になってしまった.

『デイヴィッド・コパフィールド』ドーラの後ろにはマードストンの姉がいた



私たち読者は
作者の側に目をおいているので,
心配でしかたがない.

彼は,こうして
たいせつな人たちを
失っていくにちがいない.

『デイヴィッド・コパフィールド』ペゴティーの家に見舞いにいく

「このあたりの浜辺の
人間が亡くなるときはね」

ミスター・ペゴティーはいった.

「干潮の頃なんだ.
人間が生まれるときは,
上げ潮にならないと

――満潮になって,
やっと生まれてくるんですよ.

引き潮になったら
逝っちまいますよ.

潮の変わり目までもちこたえりゃ,
満潮まで生き延びるから,

そうすりゃ,
その次の干潮で,

逝くってことに
なりますがね」

バーキスは
意識をとりもどした.

**

ディケンズは,
主人公とは対照的な若者を描く.

万能で品格のある青年紳士,スティアフォースと
卑屈な野心家の法律家のユライア・ヒープは
パフィールドが
もちあわせていないし,
けっして
同類にはなりえない人物であった.

**
彼らは,
物語前半で登場した瞬間に
周りの人々を
自身の状況にまきこむ
特性をそなえていた.

読者の予感どおり後半で,
彼らの意志を中心に
パフィールドの世界が
現実化していく.

『デイヴィッド・コパフィールド』荷物の上にすわる伯母さん

そして

パフィールドじしんも
仕事をえて
じぶんの暮らしをじぶんで考えていく
年令と状況にいたった.