つかみどころのない
退廃的なロック・バンドを思い浮かべた.
どんな曲をきいたのか覚えていないけど,
とにかく
古典に由来があったのか,とうれしかった.
小説の後半にはいり,
いくつも用意された人間関係が
重要な事態を困難な局面に
もっていく.
前半で抱いた運命の不安さが
現実味をおびてきた.
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コパフィールドは
10歳のころと同じように
煩悶しながらも
若者ゆえに
考えがいたらない.
彼には
たいせつなものを
みてほしいのに.
**
ミスター・スペンロウの娘を
みた瞬間に虜になってしまった.
私たち読者は
作者の側に目をおいているので,
心配でしかたがない.
彼は,こうして
たいせつな人たちを
失っていくにちがいない.
「このあたりの浜辺の
人間が亡くなるときはね」
ミスター・ペゴティーはいった.
「干潮の頃なんだ.
人間が生まれるときは,
上げ潮にならないと
――満潮になって,
やっと生まれてくるんですよ.
引き潮になったら
逝っちまいますよ.
潮の変わり目までもちこたえりゃ,
満潮まで生き延びるから,
そうすりゃ,
その次の干潮で,
逝くってことに
なりますがね」
バーキスは
意識をとりもどした.
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ディケンズは,
主人公とは対照的な若者を描く.
万能で品格のある青年紳士,スティアフォースと
卑屈な野心家の法律家のユライア・ヒープは
コパフィールドが
もちあわせていないし,
けっして
同類にはなりえない人物であった.
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彼らは,
物語前半で登場した瞬間に
周りの人々を
自身の状況にまきこむ
特性をそなえていた.
読者の予感どおり後半で,
彼らの意志を中心に
コパフィールドの世界が
現実化していく.
そして
コパフィールドじしんも
仕事をえて
じぶんの暮らしをじぶんで考えていく
年令と状況にいたった.
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