ドイツ,ルクセンブルク,フランス,2012『ハンナ・アーレント』
マルガレーテ・フォン・トロッタ監督,バルバラ・スコヴァ主演
(Gyao)
日本公開,2013年.
私は,ぜんぜん知らず,
今回はじめて見ました.
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ハンナ・アーレントは,名前をきいたことが
あるようなないような.
Gyaoの
「誰からも敬愛される高名な哲学者から
一転、
世界中から激しいバッシングを浴びた
女性がいる。
彼女の名は
ハンナ・アーレント」
という文句にひかれました.
読まずに,「哲学」になじもうと.
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『ハンナ・アーレント』は
アレントが
アイヒマン裁判の傍聴記録を発表することを
骨として
ユダヤ人強制連行・虐殺をおこなった
ナチス,ゲシュタポという
人間の凡庸さがおかしてしまった悪を
見る者のなかに問うてきます.
被告席のアイヒマンを
没思考で命令に従うだけの小役人にすぎない
と評し,
強制連行に協力したユダヤ人もいることを
とりあげます.
この記事に対し,
同胞を貶める思想だということで
ユダヤ人社会から総スカンをくい,
友人たちも背をむけていきます.
カメラは
アレントの知への愛情が
夫やハイデッガー,知的友人たちへの
肉体的(直接的)な情愛と
混在しているかのように
なぞっていきます.
アイヒマンについては
『アイヒマンを追え(国家対フリッツ・バウアー)』で
予備知識があったので,なんとなく時代背景が
わかりました.
アレントの哲学は
アイヒマンはどこにでもいるタイプの人間であるからこそ
もっともひどい悪をおこなってしまったことを
理解しよう試みます.
理解することは
許すことではありません.
エルサレムでの裁判は
断罪を目的としていました.
映画は
アレントの思想をとらえるには短すぎます.
私たちは.
アイヒマンを理解したいのではなく
彼の道義的な責任を問い,罰したいのです.
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哲学者は,人間の問題を
私たちに問い直そうとしたのでした.