『春子 最後の夏』人見剛司監督,2015
天王寺動物園のゾウについては
知らなかったが,
このゾウが死んだときは,小さなニュースになった.
横や前を何十回も通りながらも
数度だけ.
大人になってから一度,
その時はカバがおもしろかった.
哺乳類は
それぞれがそうとうな水準で
知性をもつ.
私たちヒトは
彼らとどこまで交流できるか.
65歳の花子が66歳で死ぬまでの
1年半くらいのドキュメンタリー.
ゾウの平均寿命をとっくにすぎた花子は
飼育員たちの成長をじっと
みまもってきた.
男たちは,
老いたゾウをいたわりながらも
自分たちの人生を
理解されているかのように
懸命に世話をする.
みている私たちは
このゾウが死んでいく話であることを
知っているのだが
少しでも長生きすることを
願うようになる.
ほとんど声をださない
静かなゾウは
老齢の哲学者のように
ヒトを見つめつつみこむ.
高度な知性をもつ動物とヒトが
どこまでコミュニケーションをとれるか,は
まだまだ経験的な範囲でしかない.
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犬が赤ちゃんの世話をする犬や
見取り犬や盲導犬.
イカにも知性があり,
飼い主ぬなついたり
人のまねができることに驚く.
ことばが通じないところが
ぎゃくに
こころが通じているような気がする.
花子は,さいごまで
生きようとする.
自分を支えてくれる人たちを
信じて
たちあがろうともがく.
生と死のはざまで
このゾウは何を考えていたのだろうか.