たけの湯な日記

個人的な感想ー画像の「引用」が不安です.

『カルメン 故郷に帰る』--高峰秀子生誕100周年

カルメン 故郷に帰る』木下恵介監督,松竹1951

かなり若いころに
テレビ放映されて見たのですが,
途中でやめてしまいました.

50年以上たったと思います.
いまみると面白い.

日本初の「総天然色映画」ということ.
1951年という時代(戦後6年).

のことを何となく想像できるようになったから
しみじみとする映画に思えたのかもしれません.

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冒頭で父(坂本武)が,カルメンの帰郷をきいて

おさないカルメンが大きな木の下で
牛に蹴られて泡をふいていた,それから頭が弱くなったと
語ります.

カルメン故郷に帰る』馬力にのる姉(望月優子),カルメン(高峰秀子),マヤ(小林トシ子)

全編にカルメン(高峰秀子)とマヤ(小林トシ子)の内面をみせない
ほがらかさが
長編文学のようにコメディに陰影を与えています.

村の人たちは,カルメンが東京にでて
芸術・文化で有名になったと大騒ぎで歓迎しました.

カルメンたち2人自身もじぶんたちは「芸術」や「文化」で努力している自覚が
あります.

カルメン故郷に帰る高峰秀子

私がこどものころは,
大阪のいろんなところに
ストリップ劇場がありました.

1970年の万博のころ
繁華街でないところからは
きえていきます.

芸術と女性の裸を短絡的に結び付けることが
日本の戦後社会の特徴の1つだったと
いまならいえるのでしょう.

額縁ショー」というのは
その端的な舞台だったようです.

**
この2人のストリッパーは
はでさと愛らしさで
村の男たちの人気の中心になります.

6日の帰郷で
東京にもどる前日に,カネに汚い運送屋「丸十」の
興行で2人は,
すすんで美人裸踊りを披露することになります.

それだけの物語です.

カルメン故郷に帰る』戦争で視力を失った田口(佐野周二)と妻(井川邦子

浅間山麓のふもとにつれてきてもらったマヤは1日で
あきてしまうし,
父親は娘のことが恥ずかしい.

田舎者の男たちは
2人に魅了はされるけれども
好色な気持ちでしかありません.

閉鎖的な山村にあらわれた
きままなストリッパーによって
村人たちに,少しだけ明るい変化を与えました.

***
悲劇の部分は元音楽教員の田口(佐野周二)夫婦.
新婚1年で徴兵され
盲目になって戦後をむかえます.
教員もできず,オルガンをひくことだけが
生きがいでした.

が,生活のため丸十に金を借りて
借金のかたにオルガンをとられてしまいます.
妻(井川邦子)は女でありながら「馬力」のしごとをしていました.

カルメンは田口にあこがれていて
つきまとって困ったという夫婦のたのしい会話があるという程度.

さいごまで
カルメンとマイが(ほんとうに)頭が弱いのかどうかは
謎です.

ただ,父親と田口のセリフから
そう思われていた,というだけです.


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高峰秀子の歌うシーンが3つほどあって
それがまた戦後的に上手で味わい深いのです.

カルメン故郷に帰る』母,父,校長先生(笠智衆)

笠智衆が,何度も浅間山麓の景色をめでるのも
日本初のカラー映画としての見せたい部分であったと
考えられます.

北軽井沢,とか駅名がでてきますが
ほんとうにきれいな山でした.