たけの湯な日記

個人的な感想ー画像の「引用」が不安です.

ディケンズ『二都物語(上)』---光文社古典新訳文庫の「新訳」

ディケンズ二都物語(上)』訳:池央耿(いけひろあき)2016
Charles Dickens, "A Tale of Two Cities," 1859

昔は,岩波文庫があったように
記憶しているのですが,今はないので
「新訳」ということで「光文社新訳文庫」.


年のせいで,この翻訳が気になって
話がわかりにくいです.
読み始めて,しまった,と思いましたが
しかたがありません.

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なっとくがいかず

図書館にないと思いながらも図書館にいくと
新潮文庫の旧版がありました.

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たとえば

光文社文庫2016,池訳
「事情を知らぬ他者には理解し難いことながら,
炎天燃えるごとき夏の日に三百マイルの彼方から
バスティーユ監獄が影を落とすようなものである.


この黒い霧を払う術を知っているのは娘のルーシーだけだった.
ルーシーはぶ無優の過去と無優の現在を繋ぐ金の糸である」

 

新潮文庫1967旧版,中野好夫
「彼の過去を知らない人々にとっては,まったくの不可解事であり,
まるであのバスティーユの牢獄が,もちろん実物は三百マイルも離れた遠くにあるにもかかわらず,
そのまま夏の陽を受けて,
サッとその影を彼の上に投げたのではないかと
思えるほどだった.


彼の心からこの黒い影を追い払う力をもっていたのは,娘のルーシーだけだった.
いわばあの不幸の前の彼と,いま不幸を越えてしまった彼とをつなぐ,
黄金の糸と言ってもよかった」

どちらが,原文に近いのかわからないですが

おそらく
新しい池訳が原文に忠実に訳していて,

中野訳のほうが,補足が多く,古い日本人に伝わりやすいように思いました.

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二都物語

上巻は,1780年代のパリとロンドンが中心.
下層の民衆の生活と
支配階級の横暴が描かれています.

いくつかの「スパイ」らしき活動と
民衆の地下活動が
事件と何かの兆しを内包しています.

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池央耿はえらい翻訳家のようだから

1)編集者がチェックしなかった
2)院生などの下請けにまかせた
3)わざと,直訳っぽくした

のように思えます.残念.

二都物語