高峰秀子生誕100年『女が階段を上がる時』--現実生活に地続きのフィクション
成瀬巳喜男監督『女が階段を上がる時』東宝,1960
見たことのない映画だと思っていましたが,
途中で,やはりテレビ見たことがあると
思い返しました.
実際に見たことがあるのかどうかは
不明で,
似たような映画シーンなのかもしれません.
***
1960年はたしかにあんな風景であったのですが,
銀座は私には遠い町でしした.
バー「ライラック」の雇われマダムの圭子(高橋秀子)は
30歳.(当時としては)中年にさしかかっていました.
使っていたユリ(淡路恵子)が店をもって,客を横取りし,
圭子の店の売り上げが下がり,
圭子めあての客であっても,彼女が
なびかないので,つけ払いを渋ります.
マネージャーの「コマッチャン」(仲代達矢)の忠告もあり
金づるの男にたいし
いい顔をみせる覚悟の必要を感じます.
自分でとりたてに行くが
圭子めあての客も金をちらつかせて
妾(愛人)としたい腹がありました.
心身の疲労で胃潰瘍となり吐血して
退院後,圭子は佃島の実家で養生します.
母も兄も甥も,圭子の仕送りだけで暮らす,
圭子のオニモツでしかありません.
そのころ,圭子のアパートの部屋で
留守番の純子(団令子)は,金満家の郷田(中村鴈治郎)に
店をもちたいとねだっていました.
圭子は,自分の店をもつために
男たちに頼みにまわりますが,
もっとも平凡にみえ
さけていた工場主(加藤大介)の
誠実さと思いやりにふれ
婚約をすることになります.
銀座の虚飾にみちた狭い世界.
男のずるさ,下劣さがみていて
恥ずかしいほど現実的に描写されていきます.
女の野心
裏にかくされた苦労.
狂言自殺と自死の境.
男の下心と嘘.
***
成瀬巳喜男は3作品をみました.
1951『めし』
1960『女が階段を上がる時』
1962『放浪記』
『めし』は,原節子.
3つとも,男がだらしなく
女が苦労しています.