たけの湯な日記

個人的な感想ー画像の「引用」が不安です.

『ゆきゆきて,神軍』1987,バブル期の日本

『ゆきゆきて,神軍』1987, 原一男監督

ニューギニアで生き残った工兵隊員,
奥崎謙三(1920-2005)の

1982-83年の活動をおったドキュメンタリー映画

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バブル経済に移りつつあった日本に
このように徹底した思考と行動の人物がいたこと,
それが映像として残っていることに驚く.

ふりかえれば,
1980年代はすでに,個人が社会に働きかける
手段が弱くなりはじめていた.

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ゆきゆきて,神軍

この人は,法や社会のシステムじたいを非人間的なものとして
戦争体験により
とらえているのだから,
政治家や警察官が市民に対して権力をもっている
うそにも気づいていた.

「時効」というものよりも
あのとき殺人をおかした犯人たちを
国家が護っていることについての憤懣.

社会やシステムをたてにして
安穏と暮らしているわたしたちに対する警鐘.

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ゆきゆきて,神軍

だれでもが言える言い訳や謝罪,
いまさら何をという「死人」へのみせかけの誠意.

奥崎は部下を射殺したことだけを
追及しているのではなく,
事実をあきらかにすること,
そこに関与した人間たちの責任を問いかけることを
じぶんの行動の原動力としていた.

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ゆきゆきて、神軍




現在の法で自分を逮捕するなり罰するなり
してくれてもかまわない.
その法と国家こそ奥崎にとって唾棄すべき相手で
あるからだ,

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ゆきゆきて,神軍

戦争,軍という名のもとに
おこなわれた多大な犯罪の犠牲者は
私たち国民の側であり,残された遺族も被害者である.

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わたしたち戦後生まれが
きいたことのあるような証言が,
その当事者たちによって語られるシーンは
自分をその罪から遠ざけようとする
凄まじい記録となっている.