たけの湯な日記

個人的な感想ー画像の「引用」が不安です.

『白い巨塔』―――山崎豊子の心意気

山崎豊子白い巨塔』(新潮文庫,全5巻)

医療小説『白い巨塔』は,
昭和40年代前半の作品であり,
設定は昭和39年からの2年半.

私は,
田宮二郎をみるべきだったが
端役の人だと勘違いしていて
有名なテレビドラマをみなかった.

***
唐沢寿明版(2003)は,1,2本みて中断.
キム・ミョンミン版(2007)は,1本みた.

岡田准一版(2019),全6本みたが,時間つぶし.

**
それなら,なぜ
2023年に文庫本を読んだか.

NHK『ラジオ・アーカイブス』で
山﨑豊子のインタビューを聞いて
この人すごい,っと思ったからだ.

ラジオでは
沈まぬ太陽』『大地の子』『二つの祖国』が
紹介されていたが,

岡田准一版テレビ・ドラマをみていたから
どうしても
原作を読みたかった.

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全5巻で躊躇したが,
読み始めると面白くて,
そんな日数はかからない.

ことに第1巻から第3巻の
医師たちの
内面や言動の生々しさ.

財前五郎は,実力を備え,
野心をもつ魅力的な
ふつうの人間であった.

彼が
国立大学医学部附属病院の中で
悪意ではなく自己中心的な熱意でもって
巨大な「医」の非人間的なシステムの
一部となってしまう.

現実的には
大学附属病院は多くの人々に
最先端の医療を施し,
財前は優れた医師であり,有意の大学人である.

社会的には,それらは権力のシステムとして
機能している.

***
小説は,作家の言葉により,
登場人物それぞれの
言動と内面,おかれた事情が
十分に語られる.

テレビドラマでは
内面は独白やナレーションで可能であるが
実際は,役者の表情と演技で
表現するしかなかったのだ.

***
山崎豊子
執拗に登場人物の心情と作者としての解釈を
書き込んでいて,
それが深く納得できる反応であった.

いわゆる純文学とはちがう「通俗小説」
ではあるが,
巨編といえる.