谷崎潤一郎『細雪』(新潮文庫,上・中・下)
私が読んだのは
1979年にもらった新潮文庫の3冊.
それから
何度も,読んではみるのですが,
3ページくらいで,
断念してきました.
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44年すぎて,
自分の終活の最重要事項が本の始末.
買ったままで読みもしなかった上に,
床にほこりとかびにまみれている
本.
自分にとっては
たいせつでも,価値はありません.
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読んでみると
世の中(時代と人々)の雰囲気が
今ににています.
ヨーロッパで
戦争が起こっています.
日本は中国大陸侵略を拡大.
そんな時代の雰囲気が
この牧岡家の人々には
遠いところのできごとで
自分たちの暮らしとはほとんど
関係がないつもりでいても
こんなご時世,という気分はあります.
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長女(鶴子),既婚,3人のこども.
次女(幸子),既婚,娘(悦子)
三女(雪子),未婚,30過ぎ
四女(妙子),未婚,30前
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雪子の人物像が
控え目な,思いやりのある
しかし,戦前の日本女性らしい
意思表示をしない
美しく,若く見える女性であり
日本的な理想的な女性のように
みえます.
彼女は,お見合いを繰り返しても
まとまりません.
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この雪子の物語として読めます.
が,読み進んでいくと
物語の中心は
幸子の家族にたいする
心情なのです.
それを軸として
戦前の,古い商家の人たちの
暮らしぶり,生き方が
みえてきます.
彼女たちの美しい装いと
芦屋や京都の風景.
大阪上本町の時間はとまっているようで
未婚の2人には息苦しいのです.
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高校で読まされる文学史の教科書に
戦前の文豪が戦後復活するという
くだりがあります.
その筆頭が谷崎潤一郎で
『細雪』
一文がわりと長くて,
呼んでいると,誰の行為や評価なのか
はっきりしない,
ひじょうに日本語文特有の
思考にしたがった文章です.
これが,
馴れてくると
読んでしまいます.
何か,すごいことが
おこるのかもしれないし
おこっていないのかもしれないような
情景.
彼女たちは
「ふん」と生返事をくりかえします.